横溝正史 悪霊島
章
これ以上は核心のネタバレになので、後は本を読んでください。
出来事
年 | 月日 | 出来事 |
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明治二十六年 | 島にすさまじい台風が襲来。大きな崖崩れを起こし、刑部神社が崖の下に埋没。 | |
昭和十九年 | 春 | 竜平、巴、駆け落ちするが、吉太郎の裏切りによりバレて連れ戻される。
竜平、巴を呼び出すときトラツグミ(鵺)の鳴き声を真似ていた。
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昭和二十年 | はる、何かの事件に関わる。
三津木、誕生。
岡山市、空襲。 巴、吉太郎を連れて播州の山奥に疎開していた。
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昭和二十三年 | 巴、双子を産む。
神楽太夫、島に来る。その後、松若が失踪。
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昭和三十年 | 十月 | はる、家に住み始める |
昭和三十二年 | 十一月 | はる、清さんと付き合う(翌年の四月まで) |
昭和三十三年 | 六月 | 清吉、失踪。 |
昭和三十六年 | 人形遣い、島に来た後、失踪。 | |
昭和四十二年 | ||
五月三(四)日 | 春雄、モナミに初来店。羽振りが良い。 | |
五月五日 | 春雄、錨屋という島の宿に泊まる。 | |
五月十三日 | 春雄、モナミに二度目の来店。羽振りが良い。 | |
五月十九日 | 春雄、酩酊して行方不明。 | |
五月二十日 | 海に浮かんでいた男、謎のメッセージをテープレコーダーに残す。 | |
六月十五日 | 午後二時 妙な男(ロン毛パーマで髭面の若者)がはるの家を訪れ、狂ったようにわめきながら出て来る。 |
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六月十六日 | はる、磯川に手紙を出す。 | |
六月十八日 | 手紙届く。 | |
六月十九日 | はる、殺される。
大膳と関係者が倉敷に来ていた。
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六月二十三日 | 金田一、倉敷にやってくる。 | |
六月二十四日 | 金田一、磯川、鷲羽山で話し込む。
英語シャツの若者、勝手にテープを聞く。
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六月二十八日 | 守衛、竜平を訪ね、東京へ(竜平から金田一に報告なし)。黄金の矢をプレゼント。 | |
六月二十九日 | 金田一、竜平を訪ね青木氏が亡くなったことを報告。竜平、真相究明を依頼。 | |
七月一日 | 金田一、刑部島に移動。祭りのため元島民が大勢、島に戻ってくる(竜平が手を回す)。
金田一、千畳敷きで吉太郎と会う。大膳に遅れることを伝えるように依頼。 吉太郎、尺八の音を聞き、驚き走って消える。 金田一、巴親子と英語シャツの若者を見掛ける。 |
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七月二日 | 金田一、大膳と会話。 | |
七月五日 |
午前
越智竜平、帰島。
広瀬警部補、川島ミヨ、神楽太夫の一行、来島。神楽太夫の一行によると神楽太夫の一人が 二十年ほど前に蒸発したらしい。 ミヨ、五郎を見るが、はるの家から出てきた男か断定できず。
誠、勇、千畳敷きで松若の失踪にについて会話。
その後、真帆、片帆が千畳敷きで人形遣いの失踪について会話。片帆、今日中に島を出ることを 打ち明ける。 午後三時 五郎、竜平を見て、「お父さん!」と叫ぶ。
夜、雷雨。
五郎、定吉、隠亡谷を降りてくる道で菅笠をかぶり、蓑を着ていた怪しい人物を見かける。
片帆、殺される。 |
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七月六日 | 金田一、大膳と吉太郎に案内されてオチョロ舟で島を一周。水蓮洞(鬼の岩屋)という洞窟も案内。
片帆、失踪が発覚。
神社で火事。 守衛、遺体で発見。黄金の矢が刺さっている。 磯川、五郎が殺害現場近くから出てくるのを見ていた(勇の証言)。
竜平が発見。 竜平が遺体発見前に社務所内で神楽太夫を見かける。
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七月七日 | 広瀬警部補、捜査員、マスコミが島に到着。聞き取り開始。 吉太郎、野良犬を仕留めに出掛ける。 吉太郎、野良犬(阿修羅)を仕留める。
片帆の遺体発見。酷い状態だったが、絞め殺されていた。
片帆のバッグから銀貨、銅貨が出て来る。
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登場人物
人物 | コメント |
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金田一 耕助 | 名探偵。 |
磯川警部 | 金田一の親友。 |
青木 修三 | 金田一が探している人物。
越智氏の片腕。五月ごろ刑部島へ渡ったが行方不明。元、賭博師。
徹底的現実主義者。
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青木 春雄 | テープレコーダーを吹き込んだ人物。四十二、三歳。
守衛のことを知りたがる。
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越智 竜平 | 刑部島出身。ストイックでシビアな感じ。アメリカがえりの億万長者。精密機械の輸入で水島コンビナートに納入している。海を汚すため島民は不満。
戦前、巴と駆け落ち。バレて連れ戻されて戦争へ。戻ったら巴は結婚していた。
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松本 克子 | 竜平のアメリカでの秘書。刑部島に全権大使格として送られた。 |
志賀 泰三 | 以前、金田一に世話になる。越智を紹介。 |
浅井はる | 市子。命が狙われていることを磯川に手紙を書くが、殺される。
一千万円以上を隠し持っていた。
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英語シャツの若者
三津木 五郎
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磯川警部のテープを勝手に聞く。
昭和二十年の生まれ。
山崎に巴のことを聞く。
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荒木 定吉 | 農家と置き薬の行商をしている若者。 |
荒木 清吉 | 置き薬の行商。定吉の父。三十六歳で失踪。
銅貨や銀貨を持っていた。
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川島 ミヨ | はるの家にロン毛パーマで髭面の若者入って出て来るのを目撃。 |
島の住民
人物 | コメント |
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山崎 宇一 | 島の駐在。 |
吉太郎 | 金田一と同じ船に乗り合わせる。四十歳前後。真っ黒に日焼け。オドオドして上目遣い。
竜平の駆け落ちを告げ口し、大膳から金をもらう。
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松蔵 | 金田一と同じ船に乗り合わせる。四十歳前後。都会ふう。嫁子供あり。 |
信吉 | 金田一と同じ船に乗り合わせる。二十四、五歳。 |
越智 多年子 | 竜平の祖母。竜平の住宅の家事取り締り役。 |
刑部家
人物 | コメント |
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刑部 大膳 | 島では最高主権者。八十歳くらい。真珠をしようとしたが、水島コンビナートが海を汚すため出来なくなり恨んでいる。 |
刑部 守衛 | 刑部神社の神主。倉敷や玉島の神社の神主を兼ねる。巴の夫、婿養子。倉敷に行っている。。倉敷と玉島にも女を持つ。 |
巴 | 真帆、片帆の母。超べっぴん。 |
真帆、片帆 | 一卵性双生児、そっくり。十九歳。 |
刑部 辰馬 | 島の村長。青木 春雄の捜索願いを出す。 |
モナミ(倉敷でも有名な一流のクラブ)関係者
人物 | コメント |
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山下 亀吉 | 学生服卸販売業。春雄が死ぬとき同じ船にいた。モナミで春雄を見かける |
小夜子 | 亀吉と良い仲。 |
田中静江 | モナミのママ。守衛に女性を世話。倉敷と玉島に一人づつ。 |
神楽太夫
人物 | コメント |
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四郎兵衛 | 社長。七十四歳。 |
平作 | 六十代。 |
徳右衛門 | 五十代。 |
嘉六 | 五十代。 |
弥之助 | 三十代。
極道が過ぎて身が持てず、いまだに独りもん。神楽にも身が入っていない。
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誠 | 四郎兵衛の孫。勇の兄。二十五歳。 |
勇 | 四郎兵衛の孫。誠の弟。二十三歳。 |
松若 | 誠、勇の父。失踪。 |
用語
用語 | コメント |
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刑部島 | 金田一が用事のある島。
昔は越智一族が住んでいたが、平家の落人の子孫が刑部姓を名乗る。村会議員なんかもほとんど刑部姓。
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シャム双生児 | 体が結合している双生児。 |
錨屋 | 島に唯一存在する旅館。主は刑部大膳。 |
市子 | いたこのような巫女。 |
テープレコーダーに残されたメッセージ
……あいつは体のくっついたふたごなんだ…………あいつは腰のところで骨と骨とがくっついたふたごなんだ……
……あいつは歩くとき蟹のように横に這う……
……あいつは平家蟹だ……平家蟹の子孫なんだ……
……あの島には悪霊がとりついている、悪霊が……悪霊が……
……鵺のなく夜に気をつけろ……
……その島の名は……その島の名は……その島の名は……
亀吉が守衛について語った後
あとから思えばこの饒舌のなかにこそ、それからまもなく起こった、あの酸鼻をきわめた殺人事件の謎を解く鍵の一端が秘められていたのである。松若が誠に残した言葉
すまんすまんと思いながらも、千畳敷きの誘惑に勝てなんだんじゃないけ。鳥が鳴いたらどうじゃとか、こうじゃとか……。ページのトップへ戻る