横溝正史 幽霊男
章
これ以上は核心のネタバレになので、後は本を読んでください。
出来事
年 | 月日 | 出来事 |
---|---|---|
一月二十二日 | 午後四時過ぎ 幽霊男、共栄美術倶楽部に出現。恵子を予約。
十一時過ぎ
幽霊男、聚楽ホテルに出現。部屋を予約。 |
|
二十三日 | 恵子、幽霊男に眠らされる。
四時頃
幽霊男、運送屋にトランクの輸送(聚楽ホテルへ)を依頼。
五時
ホテルにトランク運び込まれる。トランクは鍵を壊して開けられた。 倶楽部の一同、恵子が眠らされたアトリエに移動。 アトリエで猿ぐつわされている浩吉を発見。
ホテルで恵子の遺体を発見。
|
|
二月十五日 | 倶楽部で幽霊男が仕掛けたテープ・レコーダーでメッセージ。
帰りのタクシーで陽介、美津子、眠らされる。運転手は小指なし男。
美津子が起きると繃帯の男がいて、山田太郎、幽霊男と名乗る。
美津子がさらわれたタクシーのトランクに浩吉が潜んでいた。幽霊男(小指なし)を見つけるが捕まってしまう。
|
|
二月十六日 | 陽介、警察に保護。
美津子、浩吉、ボートの上で眠っているところを発見。発見者は健三。幽霊男から連絡があった。
|
|
三月二十四日 | 百花園にて撮影会。美津子以外の主要メンバーが参加(加納は遅刻)。
謎の男、チェックイン。
|
|
三月二十五日 | 撮影会二日目。
十時半
貞子、離れ小島に移動。 陽介、マリ、花畑で切断された足が生えているのを発見。 十一時半
貞子、池で遺体で発見される。
マリ、遺体で発見さえる。
|
|
四月十日 | 十吉、繃帯の男に蝋人形を作るよう依頼を受ける。 | |
四月二十五日 | 篠、金田一と等々力に十吉の依頼を伝える。蝋人形のモデルは鮎子だった。納入先も判明。
納入先には、ガラスの箱に蜘蛛、化粧ダンス、鳩時計、ガス・ストーヴ、虎の毛皮がある。ここで美津子の遺体発見。
加納が部屋に入ってくる。美津子の遺体を見て、違うと叫ぶ。
部屋の一隅から、鋭い女の声が聞こえる。
加納、マダムXに逃げられる。
|
|
五月三日 | 繃帯の男、ヤマト宣伝会社を訪れる。
繃帯の男、放送局で次回犯罪の宣伝をする。
浩吉、マダムXと自動車に乗っていたらしい。
十吉、マダムXに連れて行かれたらしい。
|
|
二、三週間後 | 鮎子、浅草の麗人劇場でストリッパーとして出演するようになっていた。 鮎子の踊る劇場で火事騒ぎ。 鮎子、大男に誘拐される。
鮎子、誘拐先から逃げ出す。
|
|
三日後 | 鮎子、再び舞台へ。
謎の男と鮎子が舞台で踊る、謎の男が鮎子に短剣を刺したが、実は鮎子ではなく、蝋人形だった。
|
登場人物
人物 | コメント |
---|---|
広田圭三 | 共栄美術倶楽部の支配人の一人。 |
佐川幽霊男(由良男) | 三十~五十歳。真っ黒な手袋をしている。歯が三本しかない。加納の紹介文を持って、倶楽部を訪問。
小指がない
|
加納 | 大きな病院の外科医長。
猟奇クラブの三幹部。
若い時から激しい性格だったが、結婚して落ち着いて、奥さんが亡くなった後、また暴走。愛人が出来て落ち着いたが別れてまた暴走。
|
小林 恵子 | 倶楽部の女性。由良男に最初に指名される。 |
宮川 美津子 | 倶楽部の女性。売れっ子の方。野卑。 |
都築 貞子 | 倶楽部の女性。 |
菊池 陽介 | 元、一流の大会社の社長、元、助教授。猟奇クラブの三幹部。 |
建部 健三(坊や) | 三十歳前後。新聞社の専務。猟奇クラブの三幹部。 |
西村 鮎子 | 倶楽部の女性。ずば抜けて人気。 |
奥村 | 倶楽部の事務員。 |
小林浩吉 | 恵子の弟。少し不良だが姉思い。 |
津村一彦 | 画家。狂人。蜘蛛が好き。生き血も好き。恵子が連れ込まれたアトリエの元持ち主。
5、6年前、貞子に小指を噛まれ、たぶん、小指がない。
|
等々力警部 | 本庁の警部。 |
幽霊男(歯あり) | 幽霊男っぽいが、歯並みがそろっている。 |
山田太郎 | 美津子と契約した客。住所不定。 |
もじゃもじゃ頭のボーイ
金田一 耕助
|
百花園のボーイ。 |
武智マリ | 倶楽部のモデル。
貞子の遺体の池にコンパクトを落としたが、池に落ちていたハンカチは知らないと主張。何か知っている?
その後、遺体で発見される。 足を発見した後、百花園ホテルに発見したことを知らせに行く途中でコンパクトを落としたはず、なので池の死体も見たはず。なのになぜ何も言わなかった?
|
先に百花園ホテルにチェックインした謎の男 | 二十前後に見える。 |
河野 十吉 | 昭和人形工房の職人。生き人形つくりの名人。
マダムXの手下となり、鮎子を誘拐。
|
河野 篠 | 十吉の妻。金田一、等々力に十吉の依頼を伝える。 |
マダムX | 加納の愛人。三十歳前後。 |
用語
用語 | コメント |
---|---|
共栄美術倶楽部 | 画家、素人ヌード写真家にモデルを提供する仲介業者。 |
幽霊男が恵子に行った言葉
「そう、おれの体は冷えきっている。おれの体をあたためるにゃ、君のような若い女の血が必要なんだ。うっふっふ。駄目だよ。もう、もがいても……」幽霊男が仕掛けたテープレコーダー
「わたし、幽霊男……わたしの演出による第一幕が、どんな素晴らしい効果をあげたか、皆さん、よくご存じでしょう。さて、このたびいよいよ、第二幕目の準備完了いたしましたから、ちかく、共栄美術倶楽部のモデルのかたに、共演をお願いして、またまた素晴らしい効果をあげたいと思っております。その節はなにとぞよろしく。では、今晩はこれで……うっふっふ、うっふっふ!」美津子がさらわれたときの部屋の描写について作者メッセージ
この部屋に虎の毛皮がしいてあること、外科手術に使うような電気がブラさがっていること、夜光塗料をぬった鳩時計があること、さてはまた、鏡つきの化粧ダンスがあることを、よく記憶にとどめていただきたい。そのことがのちに、大きな謎を投げかけることになったのだから。繃帯男の放送
「それではもう一度くりかえして申し上げます。こちらはみなさま御存じの、幽霊男でございます。たいへんお待たせいたしましたが、いよいよ第三幕の準備完了いたしましたので、ちかくまた、みなさまにお眼通りいたすことが出来ましょう。昭和人形工房でつくられた人形が、この第三幕において、いかなる役目を果たしまするや。なにとぞ御期待くださいますように。そして、うまくまいりましたら、絶大なる御声援を賜わらんことを……」ページのトップへ戻る