横溝正史 獄門島
章
これ以上は核心のネタバレになので、後は本を読んでください。
出来事
年 | 月日 | 出来事 |
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10年前 | 与三松、発狂。 | |
昭和二十年 | 嘉右衛門、亡くなる。 | |
昭和二十一年 | 九月下旬 | 金田一、千万の死を報せに獄門島に行く。 |
十月五日 | 千万のお通夜。金田一、分鬼頭への連絡役を引き受ける。帰り道に了沢、了然、竹蔵に会う。 花子、行方不明。 幸庵、夕方に鵜飼が寺に登っていくのを見る。
花子、遺体で発見。梅の枝から逆さまに吊り下げられていた。
犯行現場に煙草が落ちていた。この煙草は早苗が作成し、与三松が吸っているものらしい。
犯行現場から御飯が盗まれていた。
海賊の一味の一人が獄門島近くで逃げ出す(海に飛び込む)。
早苗、地下牢で太郎を見て悲鳴をあげたが、見逃し見なかったことにする?なぜ? |
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十月六日 | 清水、金田一の探偵みたいな行動に不信感を持ち、金田一を留置場に監禁する。 第二に事件発生。 幸庵、太郎と格闘。崖から突き落とされた拍子に、左腕を折る。
雪枝が行方不明になり、清水、荒木、竹蔵、了沢で探し行ったが、そのときに既に吊り鐘が現場にあったが、振り袖は出ていなかった。
八時半に通ったときは釣り鐘がなかったが(雨、小降り)、八時四十分に通ったときは釣り鐘があった。その後、雨、本降り。 いつも夕方にかかっていたラジオがこの日はかかっていない。 村人が釣り鐘がちょっとの間に移動しているのを見た。釣り鐘が歩いた?
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十月七日 | 金田一、釈放される。 第二の事件現場では釣り鐘の下に振り袖が出ており、雪枝のものと思われる。 釣り鐘の中で雪枝の遺体発見。
磯川警部、登場。金田一と九年ぶりの再会。
謎の男が山にいたため山狩り決行。
謎の男、谷から落ちて死亡。早苗が確認したところ一ではなかった。
月代、遺体で発見。遺体のうえに、萩の花が舞っていた。
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登場人物
人物 | コメント |
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金田一耕助 | 千万太より手紙を預かる。 |
久保銀造 | 金田一のパトロン |
磯川警部 | 古狸と呼ばれる古い、腕利きの警部。清水に金田一から眼を離すなと助言。 |
山田太郎 | 逃走し海に飛び込んだ海賊。三十前後の屈強の若者。 |
島の住民
人物 | コメント |
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了然和尚 | 千光寺の和尚。金田一の乗る船に偶然乗っている。呉に吊り鐘をもらいに行っていた。
獄門島の三長老であり、本鬼頭にとっては三奉行。島では網元以上の力を持つ。
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了沢 | 二十四、五歳。千光寺の僧(典座)。たいへん親切な、ゆきとどいた神経を持つがおそろしく無口。了然は了沢に寺を譲る予定。 |
竹蔵 | 金田一の乗る船に偶然乗っている。
潮つくり
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荒木 | 村長。
背の低い、ずんぐりとした、太いというより横に平たい感じの男。
獄門島の三長老であり、本鬼頭にとっては三奉行。
お小夜を与三松と争ったが負けて憎む。
警察が来る前から金田一が名探偵ということを知っていた。幸庵、了然も知っていたものと思われる。
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村瀬幸庵 | 医者。
鉄縁の眼鏡をかけ、どじょうひげと山羊ひげを生やしている。五十五、六歳。
獄門島の三長老であり、本鬼頭にとっては三奉行。
お小夜に患者をとられ、陰口も叩かれていたため、お小夜を憎む。
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清公 | 床屋の親方。 |
清水 | 島のお巡りさん。四十五、六歳。 |
お種 | 清水の妻。 |
本鬼頭本家
人物 | コメント |
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嘉右衛門 | 千万太の祖父。すでに他界。 |
与三松 | 千万太の父。気が狂っている。屋敷の座敷牢にいる。早苗にのみ従う。 |
お小夜 | 与三松の妾。月代、雪枝、花子の母。元、女役者で芝居のため獄門島に来ていたが、与三松が嘉右衛門の反対を押し切って妾にした。
その後、巫女の真似事をして島に信者を増やしていたところ、了然の反感を買って、嘉右衛門、了然に追い込まれ発狂して死亡。その後、与三松も発狂。 |
鬼頭千万太 | 八月に復員船の中で死亡。
終戦で生きて帰れることに異常な喜び。
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月代 | 千万太の妹。18歳 |
雪枝 | 千万太の妹。17歳 |
花子 | 千万太の妹。16歳 |
お勝 | 嘉右衛門の妾。五十歳くらい。気がいいが何も出来ない。 |
ミイ | お勝が飼っている猫。 |
本鬼頭分家
人物 | コメント |
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一 | 近くに復員するらしい。 |
早苗 | 一の復員に大喜び。
一の兄弟。
与三松の姪。両親はずっと前に亡くなっている。二十二、三歳だが、しっかりしていて家をきりもりする。
太郎を一と思っていた(確信はないが)。そのため太郎を発見しても報告しなかったし、逃亡の手伝いもした
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分鬼頭
人物 | コメント |
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儀兵衛 | 分鬼頭の頭。六十歳くらい。 |
お志保 | 儀兵衛の妻。巴屋の娘の娘。千万(または一)に惚れていたが、結婚できなそうなので、儀兵衛と結婚する。二十七、八歳。
島でただ一人、嘉右衛門に反抗。鵜飼で3姉妹をたぶらかし、本鬼頭を叩き潰すことを狙う。
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鵜飼 章三 | 美少年。
元兵隊。戦時中に島で物資の調達を行っていた。戦後はお志保に呼び出され分鬼頭に住む。
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用語
用語 | コメント |
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金田一が持ってきた手紙 | 了然和尚、荒木村長、医者の村瀬、の3人宛になっている。 |
網元 | 漁網や漁船を所有する漁業経営者のこと。 |
潮つくり | 潮の加減を見る役で、兵隊でいえば連隊長みたいなもの。むずかしい役で、秘伝みたいなものがあって、網元の相場なども、よい潮つくりを持ってるかどうかで決まるといわれている。 |
本鬼頭、分鬼頭 | 島の網元。もともと親類だが仲が悪い。巴屋という網元もあったが潰れた。 |
典座 | 厨房をつかさどる僧。 |
了然のつぶやき(船で機雷を爆破を聞いて)
「夏草やつわものどもが夢の跡――じゃな」了然のつぶやき(本鬼頭、分鬼頭の家を指さして)
「木曾殿と背中あわせの寒さかなじゃな」了然のつぶやき(花子の遺体に念仏を唱えた後)
「気ちがいじゃが仕方がない。――」了然のつぶやき(花子が亡くなった後に嵐で犯人足跡が消えたことに対して俳句の引用)
「夜もすがら嵐をきくや裏の山」了然のつぶやき(吊り鐘の下に雪枝さんの振り袖が見えている)
「むざんやな冑の下のきりぎりす」千万太の死ぬ前の言葉
「死にたくない。おれは……おれは……死にたくない。……おれがかえってやらないと、三人の妹たちが殺される……だが……だが……おれはもうだめだ。金田一君、おれの代わりに……おれの代わりに獄門島へ行ってくれ。……いつか渡した紹介状……金田一君、おれはいままで黙っていたが、ずっとまえから、きみがだれだか知っていた……本陣殺人事件……おれは新聞で読んでいた……獄門島……行ってくれ、おれの代わりに……三人の妹……おお、いとこが、……おれのいとこが……」花子殺害時の謎
一、花子は途中どこへ寄ったのか。二、いや、それよりも花子はなんのために、寺へのぼってきたのか。
ラジオのプログラム
一、六時十五分――労働ニュース。一、六時三十分――気象通報、今晩の番組。
一、六時三十五分――復員だより。
一、六時四十五分――カムカムの時間。
花子遺体のポケットの手紙(おそらく鵜飼(お志保)が出した)
今宵七時、千光寺境内にて相待ち候、寺は無人となるはずにつき、こころおきなくつもる話を。月代さま
了然の用意した屏風の俳句
むざんやな冑の下のきりぎりす一つ家に遊女も寝たり萩と月
読めなかった屏風の俳句(磯川警部に読んでもらった)
鶯の身をさかさまに初音かな……金田一、読めなかった屏風の俳句が読めるようになって
震えながら「そうです、そうです。警部さん、あなたのいおうとしていることはよくわかる。しかし、気ちがいなんだ。獄門島の住人は、みんな気ちがいなんだ。気がちがっているんだ。気がちがっているんです。気が……」
その後、涙を流すほど笑いながら
「気が……気が、……気がちがっている!」
「気が……キが、……そうだ、たしかにちがっている。ああ、おれはなんというバカだったろう」
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