読書の途中経過

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横溝正史 悪魔の手毬唄



これ以上は核心のネタバレになので、後は本を読んでください。

出来事

月日 出来事
昭和七年 迷宮入りをしてる事件があった。
十一月二十五日 源治郎、殺される。
昭和十年
八月十日
卯太郎、亡くなる。
昭和二十八年 放庵、親戚が亡くなり、収入が無くなる(誰かが貢ぐ?)。
昭和三十年 七月下旬 金田一、静養地を求めて、磯川を訪ね、飲む。
磯川、金田一に鬼首村、青池リカを紹介。
八月七日 金田一、放庵の家を訪れ、手紙を代筆。
八月十日 金田一、おりんを名乗る謎の老婆に会う。
卯太郎の命日。法事が行われた。放庵にいなりずしを渡す(五百子の指示で敦子、栄子が6個ずつ渡す)。
八月十一日 ゆかり、井筒旅館に訪れる。金田一、村に戻る。放庵の家で血の跡を発見。
八月十二日 捜査本部ができる。
泰子、謎の老婆に連れられ、姿を消す
八時十分前~九時十分
里子、お幹、盆踊りに行く途中で里子と老婆を見かける。
八時半
辰蔵、枡と漏斗を見つけたため持って帰る。
八月十三日 泰子、遺体で発見。枡ではかって漏斗で飲んでいる状態だった。
八月十四日 文子、行方不明。
八月十五日 文子、遺体で発見。
帯に竿秤がさしてあり、竿秤の皿に大判小判が付いているマユ玉が乗っていた。
五百子、手毬唄を披露。
金田一、神戸に移動。
磯川、本多の家で大酒を飲み、そのまま寝たところで、里子が行方不明の連絡が来る。
昭和7年の事件の被害者は足の中指が長かったことが発覚。
八月十六日 里子、遺体で発見。現場に鍵と南京錠が落ちていた。
金田一、村に戻る。

登場人物

人物 コメント
金田一 耕助 名探偵。
磯川警部 金田一をよく知る警部。
立花警部補 今回の事件の捜査主任。
多々羅 放庵 「鬼首村手毬唄考」という地方の手毬唄の考証的文章を作成 、投書。
庄屋の末裔で一義という名を持つ。事件当時、おりんという五番目の嫁と同棲していたが、事件当日は喧嘩して家に一人だった。
八人の女と結婚、離婚を繰り返す。
栗林りん(おりん) 放庵の5人目の妻。放庵とよりを戻したいとの手紙をよこす。
おいとによると、既に亡くなっているらしい。
20年前の事件時、放庵と喧嘩して、井筒旅館に来ていた。
おいと 井筒旅館のおかみ。この旅館には以前、春江と恩田がよく来ていた。
その後、敦子と恩田がこの旅館で不倫。
お照 井筒旅館のわかい嫁。
マサ子 泰子の葬儀に来ていた近所の娘。謎の老婆の影を見る。

仁礼家

人物 コメント
仁礼 仁平 山でぶどう栽培を行い、勢力を拡大させる。
仁礼 嘉平 村の支配者。二十数年まえの事件の再調査を望んでいる。一時期、敦子と大人の関係。
文子と歌名雄をくっつけようとする。
仁礼 直平 嘉平の長男。
仁礼 勝平 嘉平の次男。
青年団の団長。
仁礼 文子 嘉平の娘。
実は父なし児。
放庵が言うには、父親は恩田。
咲枝 文子の母。

由良家

人物 コメント
由良 五百子 卯太郎の母。由良家を支配者。
由良 卯太郎 山でぶどう栽培を行い、勢力を拡大させる。
敦子 卯太郎の妻。仁平の頭下げぶどう作りの教えを請う。
恩田と不倫。
敏郎 卯太郎の息子。
栄子 敏郎の妻。
泰子 卯太郎の娘。
遺体で発見される。
歌名雄に惚れている。
実は父親は恩田。

青池家

人物 コメント
青池 源治郎 リカの夫。恩田に疑惑を持つ。
疑惑の件、仁平に相談し、調査を行う。結果は黒。
恩田をとっちめようとするが、返り討ちにあい、殺される(囲炉裏のなかに頭を突っこんで死んでいた)。
活動弁士をしていて、大人気だった(青柳史郎という芸名)。
青池 リカ 亀の湯の主。
青池 歌名雄 リカの息子。村の娘たちに人気。
泰子に惚れている。
青池 里子 リカの娘。人眼を避けてる。いつも土蔵にいる。
頭から体へかけて赤痣があり、頭巾で隠している。
お幹 よく喋る女中。

別所家

人物 コメント
恩田 幾三 詐欺師。村に副業を持ち込む。
多々羅放庵の家の離れを借りて住んでいた。満州に逃げた?
足の中指の中指が長い。
別所 春江 千恵子の母。
是哉と再婚したいが、幾三の生死がわからないため躊躇している。
放庵より20年前の事件で死んだのは、幾三の方だと聞かされ、確認するために村に戻ってきた。
千恵子(大空 ゆかり) 人気芸能人。父親はたぶん、幾三。金田一と同じ時期に村を訪れる。
日下部 是哉 千恵子のマネージャー。満州がえり。50~56歳
蓼太夫妻 春江の両親。鍛冶屋。千恵子の戸籍上の両親。
辰蔵 五郎の父、春江の兄。酔っぱらい。
五郎 蓼太の孫。三枚目。

用語

用語 コメント
鬼首村手毬唄 天明時代の領主、伊東佑之の非行を唄ったものと言われている。
佑之は娘であろが、人妻だろうが手を出し、飽きると殺していた。
歌詞中の「返された、返された」は「殺された、殺された」の意味。
由良家 二大勢力家。古くから物持ち。広い田畑を持つ。
枡屋
仁礼家 二大勢力家。山を持ち、ぶどうを栽培し大ヒット。
秤屋。
青池家 亀の湯という湯治場を先祖から経営。
別所家 鍛冶屋 = 錠前屋。
放庵の部屋で見つかったもの 山椒魚、いなりずし、昭和二十年代に投函されたおりんの手紙(手紙は実は古かった!!)
トーキー 映像と音声が同期した映画。これ以前は無声で活動弁士が内容解説していた。

鬼首村手毬唄

うちの裏のせんざいに
すずめが三匹とまって
一羽のすずめのいうことにゃ
おらが在所の陣屋の殿様
狩り好き酒好き女好き
わけて好きなが女でござる
女たれがよい枡屋の娘
枡屋器量よしじゃがうわばみ娘
枡ではかって漏斗で飲んで
日がないちにち酒浸り
それでも足らぬとて返された
返された

二番目のすずめのいうことにゃ
おらが在所の陣屋の殿様
狩り好き酒好き女好き
わけて好きなが女でござる
女たれがよい秤屋の娘
秤屋器量よしじゃが爪長娘
大判小判を秤にかけて
日なし勘定に夜も日もくらし
寝るまもないとて返された
返された

三番目のすずめのいうことにゃ
おらが在所の陣屋の殿様
狩り好き酒好き女好き
わけて好きなが女でござる
女たれがよい錠前屋の娘
錠前屋器量よしじゃが小町でござる
小町娘の錠前が狂うた
錠前狂えば鍵あわぬ
鍵があわぬとて返された
返された

ちょっと一貫貸しました

五百子が唄った鬼首村手毬唄

うウちのうウらのせんざいにイ
すずめが三匹とオまってエ
一羽のすずめのいうことにゃア
おらが在所の庄屋の甚兵衛
陣屋の殿さんにたのまれてエ
娘さがしに願かけたア
伊勢へななたび熊野へみたび
吉備津様へは月まいり
娘よったがおしゃべり庄屋
あっちこっちでおしゃべり過ぎて
お庄屋ごろしで寝かされたア
寝かされたア
うウちのうウらのせんざいにイ
すずめが三匹とオまってエ
二番目のすずめのいうことにゃア
おらが在所の陣屋の殿さん
狩り好き酒好き女好きイ
わけて好きなが女でごオざる
女たれがよい枡屋のむウすめ
枡屋器量よしじゃがうわばみむウすめ
枡ではかって漏斗で飲オんで
日がないちにちさアけエびイたり
それでも足らぬとて返されたア
返された

うウちのうウらのせんざいにイ
すずめが三匹とオまってエ
三番目のすずめのいうことにゃア
おらが在所の陣屋の殿さん
狩り好き酒好き女好きイ
わけて好きなが女でごオざる
女たれがよい秤屋のむウすめ
秤屋器量よしじゃが爪長むウすめ
大判小判を秤にかアけて
日なし勘定に夜も日もくウらし
寝るまもないとて返されたア
返された

ちょっと一貫貸しまアしイたア

屋号について

むろん、金田一耕助はゆかりの生家の屋号が錠前屋であろうがなかろうが、そのじぶんはまだ意にもとめていなかった。そして、その屋号に世にも重大な意味があることを発見したときには、すでに三人の人間がこの世から抹殺されていたのである。

謎の老婆の言葉

「ごめんくださりませ。おりんでござりやす。お庄屋さんのところへもどってまいりました。なにぶんかわいがってやってつかあさい」

金田一メモ

一、放庵さんは生きているのか死んでいるのか。生きているとすればどこにいるのか。死んでいるとすれば犯人は死体をどこにかくしたのか。またなぜかくしたのか。
二、おりんさんは生きているのか死んでいるのか。
三、以下はおりんさんが死んでいるとして。……おりんさんが死んでいるとして、放庵さんがそれをしっていたか、いなかったか。
四、神戸の町田家では放庵さんに、おりんさんの死亡通知を出したか。
五、復縁を懇願するおりんさんの手紙は、昭和二十年代のいつごろ神戸から発送されたか。
六、右の手紙をさいしょに読んだのはいったいだれか。
七、八月十日の夜、おりんと名乗って仙人峠をこえてやってきたのはいったいだれか。
八、放庵さんは二時間以上もにせのおりんと対座していて、それに気がつかなかったのであろうか。気がつかなかったとすればそれはなぜか。
九、昭和二十八年以来、放庵さんの生活費はどこから出ていたか。
十、放庵さんは山椒魚をいつ入手したか、またなんのために。

泰子への手紙

あなたのお父さんのお亡くなりになったときの秘密について知りたいと思ったら、今夜九時、桜のお大師さんの裏側へおいで下さい。重大な秘密を教えてあげます。
放 庵

泰子さんへ

泰子、謎の老婆と姿を消す前の言葉

「お庄屋さんはどこで待っておいでんさりますのん……」

20年前の事件時の放庵の言葉

「いま村で大きな顔をしてるやつでも、じぶんがひとこと口をすべらしたら、面目のうて村におれんようになるのがいよる……」
「ことと次第によったら、そのうち、なにもかもばらしてしもて、村じゅう大騒ぎをさせてやるかもしれん」

五百子が歌った手毬唄と作者の言葉

うウちのうウらのせんざいにイ
すずめが三匹とオまってエ
一羽のすずめのいうことにゃア
おらが在所の庄屋の甚兵衛


「五百子の唄は中絶のやむなきにいたったが、あとから思えばそれこそ千載の恨事であった。このとき金田一耕助が五百子隠居の手毬唄を、おわりまですっかり聞いていたら……」


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